忍者ブログ

あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

>
>
第49話:あいとやきがし

第49話:あいとやきがし


「亜依ちゃんが、美佳のところに行っちゃう……」
 部屋の天井をぼんやりと見つめながら、独り言を発した。
 由佳と勉強した日は、多少なりとも気が紛れていた。
 しかし、夜になると気持ちが落ち着かなく、どうしても亜依や美佳のことを考えてしまう。
 もしかしたら亜依は、美佳にチョコを渡したのだろうか。そんなこと、考えたって意味がないのに……。
 でも、気になってしまう。考えたくないのに、頭の中から離れないの。
「私じゃ、ダメなのかな……」
 思わず口に出た言葉に、自分で落ち込んだ。
 一体どうすればいいのかな。
 私は、亜依の何になりたいんだろう。
 友達じゃ、足りないかな。
『わからない』
 ただ、胸の奥がずっと奥の方で痛んでいた。

 学校に着いても同じようなことを考えてしまう。
 亜依もいれば、美佳だっている。
 これじゃ、家にいるのと変わらないな……。
 せめて、亜依が美佳にバレンタインにチョコレートを渡しているのか。それだけでも、どうにか分かれば……。
 ふと、亜依の方を見た。
 亜依に聞いたら、答えてくれるのかな……。
 でも、ハッキリ『美佳先輩に直接渡したよ』と言われたら、どうしよう……。
 私は、立ち直れない気がした。

 それとなく、由佳に聞いてみた。
「だから、それは分からないのね」
「そうだよね……」
「でも、大丈夫なのね。美佳姉は——」
 由佳からその言葉を何回か聞いているが、不安にしかない。
 実妹が言っているから、本当なんだろうけど……。
 でも、今は美佳よりも亜依の気持ちの方が知りたかったな。

 金曜日の放課後、いつものように亜依と帰った。
 いつもと変わらない亜依の横顔を時折見つけながら、横を歩いた。
 亜依がどんなことを考えているのか、それが簡単に分かればいいのにな……。そうすれば、こんなに苦労することはないのだろうな。
「藍ちゃん。はい、これ!」
「……え?」
 亜依が、脇に抱えていたカバンから、思い出したように小さな袋を差し出してきた。
「これ。ちょっと早いけど、ホワイトデー」
「……え。私に?」
「そうだよ。バレンタインくれたでしょ?」
「あ、うん……」
 驚きながらも、亜依から受け取ると、落とさないようにしっかりと袋を握りしめた。
「い、いいの、これ……!」
「藍ちゃん、甘いの好きだからね」
「……あ、ありがとう!」
 まだまだ寒い三月だけど、亜依からのサプライズプレゼントで胸がぽかぽかと温かくなった。
 亜依は、私のことをちゃんとわかってくれている。

 家に帰ってから開けてみると、マドレーヌだった。
 美佳のことでいろいろ心配したけれど、結局亜依は私のことも大切に思ってくれていた。
 今は二番手かもしれないけど、それでも亜依のそばにいられるのなら、今はそれでもいい。
 でも——。
「亜依からのお菓子、食べれないな……」
 帰宅後、机の上に置いた袋を見つめながら、そう思った。

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード
<!--AD1-->