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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

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第2話:あいときずな

第2話:あいときずな


「やっぱり、そうだよね……」
 私は、同じ『あい』でも亜依との生涯かかっても埋めることがない差を感じていた。『月と鼈』とでも言うのかな。このまま友達でいても良いのだろうか。
 廊下で偶然すれ違った三年生の日影先輩を見かけて、そんなことを思ってしまった。
 成績優秀で、色白美人。人当たりもよく、友達も多そうに見える。
 同性からも人気があって、一年生の女子も例外ではなかった。
 さすが人気の生徒会長だと思った。
 私は、これといって秀でている部分が少ないことを自覚しているだけに、日影先輩と比べたら……。どうしても惨めに感じてしまった。
 亜依も日影先輩ほどではないが、それに近いところはある。
 私も日影先輩みたいだったら、亜依とも簡単に仲良くなれるのかな。

 ホームルームの時間。クラスの学級委員を決めるため、担任の先生がクラス全体に声をかけた。
 まだクラスメイトになって数日。お互いをよく知らないだけに、教室内はざわついた。でも、女子はなんとなく誰がなるか想像がついた。
 投票の結果、亜依の名前が挙がった。亜依はなにか自信に満ちた笑顔で立ち上がり、クラスメイトに向けて自己紹介を始めた。その姿勢はまさにリーダーそのものであり、クラスメイトたちからは亜依への信頼度を拍手で表した。

 日を増すごとに、亜依の周りには日常的にたくさんの女子たちが集まっていった。亜依の明るさや優しさ、そしてしっかりとしたリーダーシップが、多くの人々を引き付けていた。私も亜依に惹かれているひとりだったが、なかなかこの輪に入り込めず、少しずつ疎外感を感じ始めていた。
 亜依と仲良くしている他の女子たちを見て、私は嫉妬心を覚えてしまうこともあった。
『他の子たちがいなければ……』
 そんなことすら考えてしまったが、それは良くないと自重した。
 でも、私がその中に入り込めないことに対する劣等感が、心を蝕んでいくのを感じていた。

 放課後、また亜依に話しかけられずに一人で帰ろうと思った。
 後ろから誰かが駆け寄ってきた。亜依が私の元に歩み寄り、優しく微笑んだ。
「一緒に帰ろうよ」
 亜依の声が私の心を和ませたが、同時に焦燥感も募らせた。私が亜依の友達でありたいという思いと、その気持ちに応えられない自分に対する自己嫌悪に苛まれていた。
 でも、亜依の誘いは断るわけにはいかないので、一緒に帰ることにした。

 他の子と盛り上がった話を私にする亜依に、藍はますます自分が取り残されているように感じた。しかし、その感情を押し殺し、藍は黙ったまま歩き続けた。
「藍ちゃんも入ってくればよかったのに……」
 亜依の声に、私は心の内で苦悩した。その言葉が彼女の心に突き刺さり、言葉に詰まる心情は俯き加減になり、それは亜依にも気付かれた。
「藍ちゃん、大丈夫?」
 亜依は藍の手を取り、優しく声をかけた。
「他の子たちと変わらないくらいに、藍ちゃんとも仲良くなりたい」
 亜依と違ってダメな所の多い私は、差別されているようで仕方がなかった。亜依のその言葉と温かな手の触れ心地に、私は涙が溢れそうになった。
「亜依ちゃんに嫌われると思ったから、話しかけづらかった……」
 泣きそうな声で、なかなか言い出せなかったことを発した。
「大丈夫だよ。藍ちゃんのことは嫌いにならないよ」
 亜依の言葉に、胸が熱くなった。亜依の優しさと包容力に触れ、亜依の手をしっかりと握った。
 ちょっとの間に握った手の温もりが、ふたりの間に信頼と絆を築いていくことを予感させた。

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