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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

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第5話:あいとれんきゅう

第5話:あいとれんきゅう


 ゴールデンウィークの初日に、みんなで遊ぶ約束を心待ちにしていた。
『亜依ちゃんたちと遊べるなんて楽しみ!』と心躍らせていた。

 遊ぶ前日の夜、亜依と会話したい気持ちが高まっていた。
 明日いっぱい話せるのに、特にテーマは無いのに話したかった。
 亜依にメッセージを送ったが、送られてきたのは由佳の方だった。
 由佳も明日のことでメッセージを送ってきたが、由佳は送信が早い上に長文だった。
 そして、話したいことだらけなのか、なかなか由佳とのメッセージが終わらない。
 亜依から来るメッセージに返信しながら、由佳との対応で忙しかった。
「由佳とアドレス交換しなければよかったかな……」
 由佳とのやりとりに、少し不満を感じながらも後悔していた。
 けど、亜依とアドレス交換できたことや連休に遊びに行けるなど、由佳には感謝しなければならないことも事実のひとつとしてあった。
 それに由佳と縁が切れたら、失うものが多そうに感じた。由佳も大事な友達。
 だからこそ、由佳にも嫌われなくなかった。

 当日の朝。初めて亜依たちと遊ぶということで服装選びに迷うな。
 いつも制服だけに印象を良くしたいな。それだけに変な格好はしたくない。
 クローゼットから春っぽいスカートを探してきた。
『やっぱり、かわいい系かな……』
 迷いながらも、私が主力扱いにしている気に入った服装で外出した。

 約束の時間、集合場所の公園に行くと、亜依と翔子が既に待っていた。
「藍ちゃんの服、かわいい」
 真っ先に亜依が褒めてもらい、嬉してしょうがなかった。
「お気に入りの服なの」
 後から来た早智にも褒めてもらえたが、やっぱり亜依に言われた方が一番嬉しかった。
 遅れて由佳が来たが、その服に視線が集まる。
「お姉ちゃんからもらった服なの」
 それを聞くと、「かわいいー」や「いいな」と、みんなこぞって発した。
「つまり、それってお姉さんが着ていた服なの?」
「そうだよ。サイズが合わなくなるまで着ていた」
「いいなー、そのスカート。欲しいなー」
「あげないから!」
 嬉しそうな由佳に視線が集まり、亜依まで興味を示し、由佳の服に嫉妬心を抱いた。
 でも、みんなが由佳の服に惹かれるのも仕方がないのは分かっていた。
 結局は、周りにリアクションを合わせることにした。

 街中のショッピングモールで回りながら遊ぶことにした。
 ウインドウショッピングをしながら、本屋に寄ることにした。
 みんな参考書などを買っているところを見ると、私もこういうの買った方がいいのかなって思う。
 そんな中、由佳は小説を見ていた。
「由佳って、小説読むんだね」
「勉強は、お姉ちゃんが教えてくれるから。それに参考書は家にいっぱいある」
「いいなー。お姉さんがいて」
 私も妹よりも姉が欲しかったな。
「勉強以外のことも、教えてくれる。料理とか」
「由佳のお姉さん、優しそうだもんね」
 そう言うと由佳は嬉しそうな表情を見せた。きっとお姉さんのことが好きなんだろうな。
「二人ともここにいたのね」
 後ろから誰かが寄ってきたと思ったら、翔子だった。
「その……。そろそろ、ここを出ない?」
「い、いいけど」
 そんなに長居したのかな……と思って時計を見ると十四時半。まだもうちょっといても良いような気がした。
 結局、翔子が時間を気にするので、本屋を出る。

 その後もウインドショッピングをしてまわるが、とにかく翔子が時間を気にしてゆっくり見れなかった。
「亜依ちゃん、時間大丈夫?」
「あ、ホント。そうだね、そろそろ帰るよ」
 時間になり、亜依が慌てて帰ることになる。
「駅まで送ってあげる」
 ひとまず駅まで見送ることになり、急いで帰る亜依の後をつけるように走っていった。
「亜依ちゃん! そっちはダメだって……」
「だって、こっちの方が早く駅につけるじゃない」
「で、でも……」
 ショートカットしようとする亜依は、危険で有名な『ノク通り』を通ろうとするが、翔子に止められてしまい遠回りを余儀なくされた。
 無事に亜依を駅まで送り届けることができた。
「また、みんなで遊ぼうね」
 笑顔で別れる亜依を見届けたが、一緒に亜依と帰ろうと思った。けど、由佳も含めて他は帰る様子がなかった。このまま居ようか迷っていた先に、翔子が亜依が見えなくなると急に呟いた。
「亜依と一緒に遊ぶと疲れる……」
 その言葉に三人は驚いた。
「赤岩家って、とにかく厳しいのよ。特にお母さんが……」
 そういえば、亜依にお母さんの話をしようとしたら嫌な顔をされたことを思い出した。
「小学校の時、一緒に遊んで門限をちょっと過ぎて帰ったら、大泣きするまで怒られたみたい……。その後、しばらく一緒に遊んでくれなかったし、まわりも気を遣って遊ばなくなった」
 私は由佳と早智と小学校が一緒で、亜依と唯一小学校が一緒だった翔子。衝撃でしかなかった。
「あの時は、確か門限が午後四時だった……。中学生になったから、今は五時だと思う」
「五時?!」みんな七時前後で、思わず三人は驚いた。
 私もそこまで厳しくなく、携帯のおかげで連絡しておけば、多少遅くなっても許してもらえることになっている。でも、亜依はそれでもダメだと翔子は話した。
「亜依の場合、携帯を『持たされている』と言った方が正しいのかな……?」
「そうなんだ……」
「亜依は成績優秀だし、気配りもできる子で、みんなが嫌がる学級委員も率先してやってくれる。だから、うちの小学校の子は学校では仲良くしてくれるけど、学校の外に出たら関わりたくない子が少なからずいるのよ」
 翔子から亜依の事情を聞き、私は驚くしかなかった。
 きっと亜依は中学生になり、事情を知らない子と仲良くなりたかったのかもしれない。
 小学校が違い、同じクラスで出席番号も隣同士、名前も似ている私に興味を持ったのだろう。
 そういう事情を抱えながら、それでも私に声をかけてくれたことは嬉しかった。
 けど、私は知らなかったとはいえ、亜依にあんな話をして罪悪感しかなかった。

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