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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

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第9話:あいとくりーむ

第9話:あいとくりーむ


「私のせいで、亜依ちゃんの成績を悪くしたかな……?」
 中間テストの順位が出た後、落ち込んでいた亜依と一緒に帰りづらかった。
 あまりにもショックだったのかな、いつの間にか亜依が一人で帰ってしまった。
 夕食後、部屋のベッドの上で中間テストの結果を悔やんでも悔やみきれなかった。
 携帯画面を呆然と見つめるが、時々涙で滲んで見えなかった。
 亜依自身の高い目標のために、あんなにテスト勉強を頑張っていたのに惜しくも届かず。
 図書館で一緒に勉強して、亜依の真剣な顔に感心した。
 それなのに、私の頭の悪さが足を引っ張ったせいで、亜依は自分の勉強ができなかったのかも。
 私に付き合わないで一人で勉強していれば、亜依は少なくとも20位以内はキープできたはず。
 自分の成績よりも亜依の成績のことで、脳内は埋め尽くされていた。
 亜依に謝ろうと携帯を手にしたが、なんて言っていいか思いつかなかった。
 やっぱり明日直接言おう。その方が伝わると思った。

 翌日の朝、教室に行くとすでに亜依の姿があった。
 けど、亜依から『話しかけないでオーラ』が漂い、私は怖くて近づけなかった。
 しかし、席が亜依の後ろなので、気付かれないようにカバンを置くと逃げるように翔子のところへ行った。
「しばらく、あんな感じだと思うよ。小学校の時に門限で怒られた時もそうだったし……」
「そ、そうなの……」
「刺激しなければ、そのうち元に戻るよ」
 翔子はそうアドバイスしてくれたが、席が近いためどうすればいいのか悩む。
『学年20位以内』の目標は、もしかしたら亜依が決めた目標ではなく、親が決めた可能性もあるのかも。それで届かず、叱られたかもしれない。それで元気が無いのかも。
 そうなると、私は亜依に対して重罪を犯した。
 翔子は刺激しなければというけど、結局は席が近いのでどうしても無視はできない。
 席に戻ると亜依の顔色を伺いなから、声をかけた。
「……おはよう。藍ちゃん……」
 いつものような元気はなく、魂が抜けたような弱々しい返事だった。
 ただ、その先の話題が見つからないまま、始業のチャイムが鳴ってしまった。
 さすがに亜依も普段の学校生活で元に戻りつつあった。でも、どことなく闇をまとっており、私まで辛い気持ちでしかなかった。
 そして、私は亜依にどうしても言わなければならないことがあった。

 放課後になり、私はいつものように亜依と一緒に帰るか、翔子のアドバイスに従いそっとしてあげるか悩んでした。
 でも、ずっと亜依と一緒にいたいし、これからも。
 口をきいてもらえなくてもいいから、一緒に帰ることにした。そうでもしないと、二度と話しかけられない気がした。
 亜依の機嫌を見ながら、嫌われる覚悟で話しかけた。
「あ、亜依ちゃん。そ、その……一緒に帰ろう?」
「いいよ」
 意外にもあっさりしていて、いつも一緒に帰っているでしょの雰囲気で、私は拍子抜けした。
 ただ、亜依に影がまだ潜めていて、付き合ってもらっているようで悪い気がした。

 学校を出て並んで帰るが、あのことを言おうと迷った。言わなければ亜依を刺激しないで済むが、言わなければ後悔すると思った。
「亜依ちゃん、ごめんね……。テストのこと。私のせいでしょ……」
 亜依が二度と口をきいてくれなくてもいいから、勇気を振り絞って恐る恐る謝罪した。
「ううん。気にしないでよ。わたしの努力が足りなかっただけよ」
 溜息交じりに話す亜依に『でもね、私が足を引っ張ったから』とも言えず、次の言葉が出てこなかった。でも、なにか言わないと——。
「こ、コンビニ……。そう! 最近期間限定商品が出たの!」
 すぐそこにあるコンビニを目の前にして、思わず叫んだものの策略もなかった。
「そうなの? 寄ってみようよ」
 咄嗟に言ったのに亜依がついてきてくれた。ちょっと話題を変えられてホッとした。
『期間限定 クリームがたっぷりシュークリーム』を買って、近くの公園内にあるベンチで一緒に食べることにした。
「おいしー。クリームがいっぱいだと幸せ感じるよ」
「そうでしょ。ホイップとカスタードが通常より多めなの」
 今日初めて亜依の笑顔を見て、ダブルクリームの甘さもあって、幸せを二重に感じた。
 けど、話題を変えたことには成功したが、まだ心残りがある。
 亜依は許しているかのようだったが、それだと私の気が許さない。
 私は、結局なにをやってもダメなのかな……。つい下を向きたくなる。
「藍ちゃん?」
 亜依に呼ばれて顔を上げて、亜依のいる左を向いた。
「鼻にクリームがついてるよ」
 亜依が自分の鼻を差して指摘してきた。シュークリームを持ちながら頭を下げたからその時かも。
「取ってあげようか?」
 亜依が詰め寄ってきたので、私はドキドキした。なぜなら図書館でのチョコレート菓子のことを思い浮かべてしまった。クリームを取るって、どうやって……。でも、この場合だと直接——。
「だ、だ、大丈夫だよ……。じ、自分で取るよ……」
 その先を考えたら思わず恥ずかしくなり、ポケットティッシュを持っている亜依を断った。
 亜依からティッシュを一枚もらうと、亜依から見えないように背中を向けてクリームを取った。
「ごめんね。恥ずかしい思いさせて……」
 鼻にクリームがついていたことより、亜依がそんなことするのか考えてしまった方が恥ずかしかった。だからこそ、赤くなっているかもしれない私の顔を隠したかった。
「藍ちゃんって、どこか抜けているかわいいところがあるけど、そんなところも好きだよ」
 私のドジッぷりをかばってくれる亜依の優しさ、私は好きだよ。
 すっかり通常の亜依に戻って、シュークリームの偉大さを感じた。

「また、一緒に勉強しようよ」
 別れ際に亜依が笑顔で言ってくれた。その言葉に亜依への罪悪感から開放された気がして、すごく気持ちが晴れた。
「私でいいの? 邪魔にならない?」
「藍ちゃんに教えると、わたしの勉強にもなるから」
「そう言ってくれると私も嬉しい」
 私にとって、亜依との時間が大切。亜依が元気になってくれることが何よりも嬉しかった。

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