「私は中学校生活、うまく送れるのかなぁ……」
私は、どんより暗く曇った不安とキラキラ光る期待で高鳴っていた。
入学式の前日、新しい学校での生活に対する様々な想いを胸に秘めていた。友達ができるか、授業についていけるか。そして、新しい環境に馴染めるか──そんな不安が心をよぎった。
でも、同時に新たな出会いや初めてするような経験に対する期待も膨らんでいた。
入学式当日。桜は散りかけていたが、穏やかな暖かさで晴れた朝だった。
「藍(あい)、そろそろ行かないと遅刻するよ!」
母の言葉に慌てて着替えた、白地のセーラー服に紺のスカート。新しい制服を身に纏い、鞄を肩にかけると、親の送り届ける言葉を胸に家を出た。
お気に入りのかわいらしい制服で着て歩く、初めての通学路。制服の赤いスカーフを揺らしながら、春の陽気に包まれた。
きっと三年間通ることとなるだろう、学校の門をくぐった。校門の前の人混みの中を進む彼女の目に飛び込んできたのは、かわいらしい笑顔を浮かべる少女だった。その少女の存在は、まるで一筋の光が私の心を照らすかのように感じられた。
「……この子、すごくかわいい」
私は思わず呟いてしまった。その瞬間から私の心に、彼女に対する特別な感情が芽生えていたようにも感じていた。
入学式。校長先生の話を聞きながら、周りを見渡した。三年間、共に過ごすことになる同級生。そして、あの子とも。
生徒会長の「三年間が楽しいものにできるように」との言葉に気持ちが押された気がした。
入学式が終わり、新しいクラスに向かう途中で、私は何度も彼女の姿を見かけた。そして、彼女が自分と同じクラスになったことを知った時、心の中でほんのりと嬉しい気持ちが広がった。
名前も亜依(あい)で、私と名前が一緒だったことも親近感がより増していった。
しかし、席が近いにも関わらず、なかなか亜依と話す機会を得られなかった。私が内気な性格なところがあるのは自覚していて、自分から積極的に話しかけることが苦手だった。それでも、ふとした瞬間に亜依と目が合い、微笑みを交わすことがあった。
お昼休み、勇気を振り絞って亜依に声をかけようと決意した。
しかし、気づけば肝心の亜依の姿がなく、話しかけるタイミングを掴めなかった。結局、一人でお弁当を食べることになってしまった。
放課後も、思い切って亜依に話しかけようとしたが、なかなか言葉が出てこなかった。そんな中、誰かが私の後ろから声をかけてきた。
「入山さん、待って!」
驚いて振り返ると、亜依が笑顔で近づいてきた。
「その……一緒に帰らない?」
亜依の誘いに、私は内心で安堵した。やはり亜依も名前が一緒で気にはなっていた。
二人は話しながら、道を歩いていくうちに、お互いのことを少しずつ知っていく。そして、家が近いことがわかった。
「名前が一緒だから、仲良くしようね」
亜依の言葉に私は胸が熱くなった。彼女は初めての友情が芽生える瞬間を感じ、心の中で亜依に感謝の気持ちを抱いた。
この出会いが、ふたりの中学生活に新たな光をもたらすことを確信した。きっと私たちは親友以上の関係性になれることを予感した。
そして、私は心から、この新しい友情が永遠に続くことを願った。