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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

第20話:あいとみか


『日影先輩だ……。やっぱりきれいだな……』
 学習塾の廊下を歩いていると、生徒会長とすれ違い足を止めた。その美しさと落ち着いた雰囲気に惹かれていた。彼女の存在感は際立っていて、その姿を見るだけで、周りの空気が変わるように感じた。
 校内の学力テスト、三年生の学年一位。日影先輩も、この塾なんだと思った。

 そのまま由佳の教室に向かい、由佳の隣に座った。
「由佳、大丈夫?」いつもとは違い、元気がなさそうだたった。
「うん……。大丈夫だけどね」
「でも、体調悪そうだよ?」
「……大丈夫なのね。本当に……」
 確かに、顔色が悪いわけでもないみたいだし、熱もなさそうかな。ただ、機嫌は悪そうだった。
「あまり無理しないで」
 これ以上そのことに触れると、由佳の逆鱗に触れそうだったので、そのくらいにした。

 次の休み時間、由佳を心配して様子を見に行こうと教室を移動した。
 すると前から由佳と生徒会長の二人が並んで歩いているところに出くわした。別に悪いことはないのに、思わず二人に気付かれないように隠れた。
 そっと、物陰から二人の様子を伺うと、そのまま女子トイレの個室に一緒に入っていった。
『日影先輩と由佳が一緒に……?』
 しばらく待ってみると一緒にトイレから出てきた。気付かれないように後ろをつけてみた。
「……ごめんね。なんか、急に……。塾で……になると思わなかったのね」
 ちょっと離れていて、しかも廊下の他の生徒の話し声で聞き取りづらい。
「……こういうこと、恥ずかしくて言えないのね」
「由佳。そういうことってあるから、遠慮なく言って」
「ありがとうね……。頼りにしているね」
「ちょっとは、落ち着いてきたみたいだね」
「うん、朝から下の方が変で。……のおかげで助かったのね」
「由佳のためなら、いつでもしてあげるからね」
「このことは、恥ずかしいから誰にも言わないでね」
「大丈夫。二人の秘密にしてあげるから」
「……大好き!」由佳の方から抱きついていた。
 これ以上見てはいけないと思い、私は二人からそっと離れることにした。

 夏期講習が終わった後、由佳と一緒にジュースを片手にベランダへ出た。
「少しは元気そうみたい……かな」
 私は、休み時間のことは見なかったことにして、由佳に話しかけた。
「だいぶね」
 私には言いたくないのか、言葉少なめの会話だった。
 トイレで二人が何をしていたのか。考え込む私の頭の中で、様々な想像が駆け巡った。その内容が気になって仕方なかった。
 でも、聞いたら怒るんだろうな。さすがに由佳に聞くのは避けた。
「由佳って、夏休みの宿題って終わった?」
「八月の頭に全部終わった」
「え! 私、まだ半分くらい残っている」
「夏休みは、半分残ってないのね」
 学校の宿題に、塾の勉強。なかなか宿題が終わらない。要領の良い子はいいな。
「家に帰ったら、もう少し宿題を進めようかな」
「わたし、塾の学力テストがあるから、帰ったらそっちに備えるけどね」
「そのテストは、私のクラスもあるの……?」
「当然ね」
 結局、私の夏休みはなくなりそう。

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