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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

第22話:あいとぎむ


「勉強がこんなに楽しいと思わなかったな」
 自分でも信じられない気持ちだった。今まで、勉強はただの義務であり、嫌な部分もあったかな。
 しかし、夏季講習で成績が上がる喜びを味わったことで、勉強に対する考え方が少しずつ変わってきていたかもしれなかった。

 夏休みも終盤に差し掛かり、家での宿題もだいぶ進んでいた。
 いつもなら最終日間近まで焦って終わらせることが多かった。けど、今年は効率よく勉強を進めれたような気がする。
 宿題を一つ一つ終わらせるたびに、小さな達成感を感じていた。

『昨日、こっちに帰ってきたよ。夏休みの最後くらい会わない?』
 夏休みの間にしばらく親戚の家に行っていた亜依が帰ってきた。そのため、しばらくの間、亜依は会っていなかった。
 亜依から届いたメッセージに、私は喜んで返事をした。
「久しぶりに亜依ちゃんと会える!」
 七月を最後に会っていなかったので、およそ一ヶ月ぶり。その間ずっとメッセージのやりとりはしていたし、電話でも話した。けど、直接会うのは新学期になるかと思っていただけに、この誘いは嬉しかった。
「亜依ちゃんと会うなら、明日は何を着ていこうかな……」
 今すぐ服選びをしたいくらいだけど、宿題も片付けなければならない。早く今日の分を片付けよう。

「亜依ちゃん、会いたかったよー」
「わたしも!」
 嬉しそうに亜依を抱きついて迎えた。ほんの一ヶ月くらいだったけど、まるで数年くらい会っていなかったような雰囲気だった。夏休み最後の週に、再び亜依と一緒に過ごせることが嬉しかった。
 私はカフェでもファミレスでも良かったのだけど、亜依が図書館がいいと言ったので、私は亜依の意見に乗った。結局、亜依がいればどこでもいいの。
 七月は夏季講習がない日に会って図書館に来ていたが、亜依がいない間はなかなか来なかったので、こっちも久しぶりに感じた。
「亜依ちゃんは、やっぱり宿題終わった?」
「八月の上旬には終わったよ」
「いいな……。私は今日でなんとか終わりそうかな」
「でも、だいぶできているじゃない」
「そうなの。だいぶ進んだかな。それも、夏季……」
「どうしたの?」
 亜依が不思議そうに見つめる。
「ううん。ごめんね、なんでもない」
 慌てて、私がごまかした。
『亜依が夏期講習のことを知ったら怒るんだろうな』
 由佳と一緒に夏季講習に行っていたなんて話したら、亜依は余計怒るんだろうな……。そもそも由佳は、亜依には声をかけなかったくらいだし。
 隠し事をしていることへの罪悪感が、胸の奥で小さく疼いていた。しかし、それでも亜依にそのことを話すことはできなかった。
 亜依の笑顔を見ていると、余計な心配をかけたくないと思ってしまうからだ。

 私はそう考えながらも、今はただ亜依との楽しい時間を大切にしようと思った。夏休みももう少しで終わり、学校生活が再び始まる。そんな日常が戻ってくることを思うと、少し安心する部分もあった。

 夏の夕暮れが近づき、日差しが少しずつ和らいでいく。心の中で、まだ解決されていない思いを抱えながらも、二人は一緒に並んで帰った。
「来週から学校だから、また毎日会えるよ」
「そうだね! 私も亜依ちゃんと会えるから楽しみだな」
 私はその瞬間、自分が亜依との関係を大切に思っていることを再確認した。
 そして、二人の関係がずっと続くことを願った。

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