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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

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第24話:あいといせかい

第24話:あいといせかい


「私は、由佳にいろいろ助けられているな」
 自宅のベッドに横たわり、ぼんやりと天井を見つめていた。
 頭の中には、由佳のことがぐるぐると回っていた。由佳の優しさと支えがなければ、夏休みの宿題も講習も、こんなにうまくいかなかったかな。
 今更ながら、その存在の大きさに気付かされている。
 夏休みが終わり、学校が始まってからも、由佳の存在はどこか心強かったな。

 二学期の授業も始まり、そのうちの休み時間。
 次の授業の教室へ移動するため、由佳と一緒に廊下を歩いていた。
「——そうなら家に来てくれたら、教えてあげるのね」
「ありがとう由佳。今度教えて」
 その話しを聞きながら、どことなくお腹の当たりを抑えた。
『なんか、トイレに行きたいような……』
「大丈夫? なんか、顔色悪いのね」
「う、うん。だ、大丈夫かな……」
 ど、どうしよう……。この辺りは三年生の教室が固まっているから、トイレを使うのも必然的に三年生が多くになる。なんか入りづらいから、違う場所までもう少し我慢しよう。
「本当に大丈夫?」
 普段冷たい感じの由佳が心配するなんて、よっぽどなのかな。
 そう考えていると、余計に持ちそうになさそうに感じてきた……。
「ゆ、由佳さん。一緒にトイレついてきてくださいな……」
「中学生なんだから、一人で行きなさい」
 やっぱり由佳って冷たい。一人でトイレに行けないのでなく、三年生がいたら行けないの。
「せ、せめて入口まで……」
「しょうがないのね……」
 渋々ながら由佳がついてくれると、予想通り女子トイレから声がする。やっぱり入りづらい……。
『ど、どうしよう……。絶対、三年生がいる……』
「ねえ、由佳さん。やっぱり、中まで入って——」
 すると中から三年生たちが出てきた。
『ど、どうしよう。先輩たちに絡まれたりしたら……』
 三年生たちが私たちに気付くと即座に近づいてきた。やっぱり、絡まれた……。
「由佳ちゃんでしょ? お姉さんに似ていて、かわいいー!」
 三年生たちは由佳の方に囲むように近づいた。
「そ、そうだね……」
 由佳は急に話しかけられたせいか、驚きの表情を隠せなかった。
「笑ったところも似ているー!」
「ほんと、姉妹だねー」
 三年生たちは、すっかり由佳に夢中だった。
「あ、あの……。わ、私、トイレに……?」
 遮るように三年生たちに声をかけたつもりだったが、全く聞こえていないみたいだった。結局、私はその隙にトイレに駆け込んだ。

「あー。びっくりしたのね……」
「で、でも。本当に、由佳がいてくれて良かった」
「ちびあいちゃんはね」
 私がトイレに入っている間、質問攻めにあっていたらしい。それだけ、由佳のお姉さんは人気があることになる。いわゆる『高嶺の花』だからかな。仲のよい親友レベルの子を除くと、同学年の女子でさえ話しかけるのが気兼ねすると聞くくらい。
 そう考えると、私はその妹の由佳とよく仲良くできているな。本来なら由佳もそういったポジションにあってもおかしくはない。でも、由佳は冷たいところがあって取っ付き難いけど、仲良くなると実は話しかけやすい。
 それに、私は由佳に多くのことで助けられ、由佳のおかげで中学生活を楽しく過ごせている。
「私たち、ずっと友達でいようね!」
「どうしたのね、急に。具合が悪いなら、保健室に連れて行こうか?」
 でも、その由佳の表情は嬉しそうな笑顔だった。

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