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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

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第32話:あいとはりがみ

第32話:あいとはりがみ


「私は、こんなことで亜依といられるのかな……」
 自宅の部屋で一人、ベッドに寝転びながら、私は思わず呟いた。
 由佳の作戦に乗ったのはいいけど、この先に待っている未来が全く見えないな。
 本当に、これで亜依を美佳から引き離せるんだろうか。
 そもそも、私は亜依にとって、そんなに大事な存在になれるのかな。その不安が心に広がるたびに、焦りと自己嫌悪が渦巻いていく。
 何もかもが完璧に見える美佳と比べたら、私はどうしようもない存在にしか感じられないな。由佳は『諦めさせればいい』なんて簡単に言ってたけど、そんなことが本当にできるのか、不安ばかりが募る。
 でも、立ち止まっているわけにはいかない。
『私は、亜依のそばにいたい……』
 それがどんなに遠回りでも、どんなに不確かでも、少しずつでも亜依に近づきたい……。

 休日の午後、亜依と放課後に図書館に行く約束をしていた。
 もう少ししたら期末テスト。勉強に集中しようと、お互いを励まし合う時間が増えていた。
 一緒に並んで歩くと、ふとした瞬間に亜依がこちらを見て微笑むのが嬉しくて、心の奥が温かくなる。
 図書館の学習室では、それぞれのテキストを開いて静かに集中していた。周りには勉強に打ち込む他の生徒たちもいて、机に並んだ辞書や参考書がその重さを表しているように見える。
 亜依は真剣に頷きながら話を聞いてくれて、ときどき嬉しそうに微笑んでくれる。
 その笑顔に少しでも触れられるなら、どんなに努力してもいいと思えたな。

「ねえ、藍ちゃん。ちょっと寄ってもいい?」
 亜依と図書館で勉強してから、そのまま一緒に買い物をすることになった。
 カバンを肩にかけながら並んで歩いていた。図書館で集中して勉強したせいか、気持ちも少し落ち着いていたかな。
 亜依が本屋で選んだ本の話をしてくれる声が耳に心地よく響く。
 亜依が美佳の話をしなければ、普通にこうして一緒にいられる。ただ一緒に、穏やかに過ごすことができる。これだけでいいのにな……。そんな気持ちが込み上げてきて、私は小さく笑みを浮かべた。
「やっぱり、藍ちゃんと一緒だとやりやすいよ」
 亜依が、にこっと笑って言った。私は一瞬ドキッとし、顔をほんのり赤くしながらも、なるべく平静を装って返した。
「私も……! 亜依ちゃんといると楽しいな」
 そんな会話を交わしながら、私たちは目的の店へと向かい、必要な文具や雑貨を手に取ってカゴに入れていった。お互いに意見を交わしながら、ささやかな買い物の時間を楽しんだ。

「そろそろ帰ろよ」
 二人で笑い合ってから、亜依が言ったその時だった。
 ふと、店内に貼られた一枚のポスターが目に留まった。色鮮やかな文字とイラストが印象的な、今度行われる高校の文化祭の案内。
 文化祭——そこにいるだけで楽しめそうな場所。亜依と一緒に行けたら、たくさん思い出が増えるのかもしれない。きっと、そんな特別な時間になるかな。
「あのね……あ、亜依ちゃん」
 私はポスターを指差して、少し照れくさそうに言った。
「文化祭。そ、その……い、一緒に行かない?」
 ポスターを見つめる私の声に、亜依はうなずいた。
「うん、行こうよ!」
 その言葉に心が踊った。私と亜依だけの思い出が増えていく。
 こうして亜依のそばにいられる日が続くのかもしれないという小さな希望が、胸の奥にじんわりと広がっていく。

 ベッドに入った私は、文化祭のことを考えながら、自然と微笑んでいた。
 亜依との時間を積み重ねることで、自然にその心が美佳から離れてくれると信じたい。
『私は、亜依ちゃんと行きたい』
 静かな夜の中でつぶやいた言葉が、少しだけ力強く響いた気がした。

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