「小学生はいいな。遊べて」
机に向かいながら、ため息交じりに呟いた。
部屋の外からは、ゲームの効果音が延々と聞こえてくる。
もうすぐ期末テスト。成績を少しでも上げたいのに、周りの状況がそれを許してくれない。
叫び声から察するに、きっと格闘ゲームなんだろうな……。
私、あれ苦手なんだよね……。コマンド入力とか、よく分からないから簡単に負ける……。
そんなことより、勉強しなきゃ。私が倒すべき相手は、期末テストなんだから。
外の音を気にしないように、英語の問題集に取りかかった。
「次の問題は……以下の会話文を読んで答えなさい。えっと……」
他に誰もいない自分の部屋だったから、ブツブツ言いながら問題文を読み上げながら問題を解いた。
「What are you going to do about that bathhouse you destroyed? You're always annoying me. ——」
私が長文問題を真剣に取り組んでいる中だった。
『Ready fight!』
「うるさい!」
つい、ゲーム音に腹が立った。
思わず叫んだのち、シャーペンを机に置いて部屋の外に飛び出した。
「もう、我慢できない!」
私は元凶となっている音源の方に向かい、乱入していった。
「なんで私が……」
大きめのピンクのマフラーで顔を隠しているが、その右頬は今でもズキズキ痛い……。
「本気で殴ることないよね……」
大丈夫かな……赤くなってないかな。
瞬殺KO負けした私は、泣きながら勉強道具を詰めて出ていった。細かいものまで気が回らず、手鏡を持ってくるの忘れたな。
冷たい冬の風を受けて少しずつ落ち着いてきて、涙も引いていった。
「なんで、こんな思いをしなきゃいけないの……」
私は、いつもの図書館へと足を向けた。静かで落ち着ける場所が欲しかった。
図書館に入ると温かな空気が私を包み込み、少しだけホッとした気持ちになる。
静かな空間で、勉強に集中できそうだった。
机に座り、鞄から取り出して勉強の続きを始めた。図書館はみんな静かにしてくれるから、集中して勉強ができる。
でも、いつも横には亜依がいるが、それがなくて寂しかった……。
今日は亜依が都合が合わなくて、自室で勉強していた。けど、やっぱり図書館だな。
「亜依ちゃんは、今どうしてるかな……」
携帯を取り出し、亜依にメッセージを送った。
『うるさいから外で勉強してるの』
返事はすぐに来た。
『わかる! うるさいのめっちゃわかるよ!』
その短いメッセージに、思わず笑みがこぼれる。
亜依と少し話せて、気持ちが和んだ。持つべきものは親友だな。
「親友と言えば……」
由佳に入れてもらったアプリを開いてみた。
画面には分かりやすい解説と演習問題が並んでいる。
「これは……すごい!」
一つ一つの説明が丁寧で、今まで曖昧だった部分がスッキリと理解できる。
夢中になって問題を解いていると、時間が経つのも忘れていた。
天井のスピーカーから音楽が流れて、ようやく閉館時間になっていたことに気付いた。
周りを見渡すと、もうほとんど人はいなかった。
亜依がいると門限を気にしていて、閉館時間までいなかった。
初めていた閉館時間の雰囲気に驚きつつも、慌てて帰った。
しかしながら、家には帰りづらいな……。
恐る恐る家に帰ると、自室の机にピンクの紙がおいてあった。
『ごめんなさい』と、かわいらしい文字で書かれた手紙だった。
私は手に取りながら、心が少しだけ温かくなるのを感じた。
「もう……。かわいいところもあるなー」
机の引き出しに手紙をそっとしまった。