「雪が降りそうなのに塾か……」
今にも雪が降りそうな冬空を見上げながら、私はマフラーをきゅっと巻き直した。
小さく呟いた言葉は、冷たい空気に吸い込まれていく。
外は寒いし、正直に言えば家でゆっくりしていたいな。
けれども……由佳の存在が心のどこかで背中を押している気がする。
そもそも亜依と一緒に頑張りたい——そんな思いが私を塾へと向かわせるの。
塾に到着し、教室に入る前に廊下で由佳と会った。
由佳とは教室は違うので、別に待ち合わせる必要はどこにもない。
けど、なんとなく会うと由佳の顔を見るだけで、なぜか少しだけ心が暖かくなるな。
由佳が私に気づくと、私は微笑みながら駆け寄っていった。
「由佳。今日の服、かわいいー」
今日の由佳は、少し大人びた雰囲気のセーターを着ている。
「今日の服は自分で買ったのね」
「そうなんだ、いいなー」
私は驚きながらも、由佳らしいセンスに納得していた。
みんなとよく遊びに行くときは、なにかと『お姉さん』の服をよく着ていた。けれども、今日は一段と自信に満ちた雰囲気をまとっている。
「いいなあ、センスがあって羨ましいな」
由佳は言葉にはしなかったが、なんだか嬉しそうだった。
授業が終わる頃には、すっかり空が暗くなっていた。
廊下に出ると、冷たい空気がすぐに体を包み込む。私が小さく震えていると、隣から由佳が声をかけてきた。
「ちびあいちゃん、なんか寒そうね」
「うん。急に寒くなったかな……」
「今年は、寒いみたいね」
「そうなんだ……」
外の天気が今にも雪が降りそうで、それも納得ができた。
冷えた手を擦り合わせる仕草をしていると、由佳は優しくそっと私の手を握った。
「本当……。手が冷たいのね」
その温かさに驚きながらも、私の心臓はドキドキと高鳴った。由佳の手は、自分の手とは違い、とても柔らかくて暖かかった。
「……う、うん。そ、そう、そうなの……」
手先は冷たいのに思わぬ形で由佳に手を握られて、顔が熱くなるのを感じた。
ただ由佳に手を触られただけなのに、なぜか動揺してしまった。
「帰りに、コンビニに寄って行こうね」
由佳はにっこり笑うと、手を離して提案した。
「あ、ありがとう、由佳……」
二人で塾を出た後、近くのコンビニに立ち寄った。
私は店内に漂う温かい空気と美味しそうな匂いに、私はほっとした。
「何か温かいもの買おうね。あんまんとかどう?」
「あんまん、いいな。そうしよう」
あんまんを手にすると、その温かさと香ばしい匂いに思わず笑みがこぼれた。
一口かじると、中から甘いあんが顔を出し、冷え切った体がじんわりと温まる。
「おいしい……!」
隣の由佳も嬉しそうに頷いて、自分の分を口に運ぶ。
「由佳のおかげで暖かくなれたな……」
由佳の手の温もりにも似た、あんまんの暖かさに心も温かくなった。
雪がちらつく中、そっと身を由佳に寄せた。