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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

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第42話:あいとふりそで

第42話:あいとふりそで


「きれいな着物だな……」
 街は二十歳の集いで祝う晴れ着姿の女性たちで華やいでいた。
 図書館帰りの私たちは、少し賑やかな商店街を歩いていた。
 ふと目の前に、艶やかな振袖をまとった女性たちの姿が現れた。
 赤や水色、金糸で装飾された華やかな着物、彼女たちは嬉しそうに写真を撮り合っていた。
 その光景に、私は思わず足を止めてしまった。
「本当……! 振袖って、やっぱり特別だよ」
 亜依も同じように、その光景に目を奪われていた。
 写真を撮り合う彼女たちの笑顔を見ていると、自分たちの未来がふと頭をよぎった。
 あと数年もすれば、私もこんなふうに振袖を着る日が来るのかな……。
「いつか、あんな着物を着てみたいよ」
 その光景に心を奪われる中、亜依が小さく笑みを浮かべながら言った。
「きっと似合うと思うよ、亜依ちゃん!」
 私たちが成人する頃には、どんな生活をしているんだろう。
 亜依と友達でいられるだろうか。それとも——。
 そんな考えを巡らせていると、亜依が柔やかに言った。
「わたしが二十歳になったら、美佳先輩にも見てもらいたいよ」
 亜依のその言葉に、私は思わず息を呑んだ。
「み……。み、み、美佳先輩に……?」
 動揺を隠せないまま尋ねると、亜依は頷いた。
「きっと、素直に褒めてくれそうだし。わたし、先輩に言われたら、すごく嬉しいと思うんだよ」
 亜依の目は、真っ直ぐな瞳をしていて本気さを感じた。
 その言葉に、私の胸がざわつく。
 私がどれだけ頑張っても、美佳ほど亜依に影響を与えられる存在にはなれないのかな……。
 そう考えるだけで焦りと不安が、心の中で風船のように大きく膨らんでいった。
 私は、それ以上のことは何も言えなくなった。
 そして、私がそこに入る余地がないような気がして、胸の奥が痛くなった。
「……藍ちゃん?」
 亜依が首を傾げて、私の顔を覗き込む。
「えっ。あ……、な、なんでもないよ!」
 慌てて笑顔を作る私を見て、亜依は不思議そうにしながらも前を向いた。
 どこかで亜依が振り向いてくれると信じてきたけれど、それだけでは足りないのかもしれないな。
 美佳の存在を乗り越えられるのは、一体何なのだろう。
 私にはまだ、その答えが見つからなかったな。
 ——由佳の作戦、本当にこれでいいのかな?
「ねえ、藍ちゃん。さっきの振袖の人たち、すごく楽しそうだったよ。ああいうふうに、大人になるのって素敵かも」
 亜依の言葉に、私は少し考え込んだ。
 自分がどんな大人になるかなんて、まだ想像もできないな。
 でも、亜依の隣にいられる未来があるのなら、それだけでいいと思った。
「私たちも、あんなふうに笑える未来がいいな」
 なんとかそう返すと、亜依は笑顔を返してくれた。
 もっと亜依にとって特別な存在になれるように、私は変わらなきゃいけない。
 それがどんな方法か、まだわからないけれど、きっと道はあるはずなの。
 夕暮れの街並みを歩きながら、私はぼんやりと思い浮かべた。

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