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あいとあい

2人の女子中学生の話「あいとあい」を書いています。

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第38話:あいとくりすます

第38話:あいとくりすます


「今年、みんなと過ごせるのもわずか……」
 教室の窓から見える冬の空を眺めながら、私はそっと呟いた。
 今年も残り少なくなり、時間が流れる速さを改めて実感した。
 少し寂しい気持ちになりながらも、この日々を大切にしたいな。

 期末テストが終わった数日後の昼休み。
 テストの結果を見ていた私は、同じく成績表を手にした早智と翔子と混ざっていた。
「うーん、59位だった」早智が少し恥ずかしそうに笑う。
「58位。早智には勝ったけどね!」翔子は得意げに胸を張る。
「ちびあいちゃんは、どうだった?」
「私は……55位だった」
 そう言うと、二人が驚いた顔で私を見た。
「えっ、ちびあいちゃんがそんなに上がるなんて! すごいじゃん!」
 翔子が目を丸くして言う。
「いろいろ頑張っているの」
 視線をそらしながら、由佳に教わった勉強アプリのことを思い浮かべた。
 あのアプリのおかげで、苦手だった科目が少しずつ分かるようになった。
 心の中で由佳に感謝した。そして、自分でも驚くほどの順位上昇に少し誇らしい気持ちになっていた。

 数日経過した、クリスマスイブの日。
 終業式が午前中で終わった放課後。私は由佳と早智と三人で教室の端で何気ない会話をしていた。
 冬休みが始まるという解放感から、自然と笑顔があふれる。
 そんな中、亜依と翔子が二人そろってやってきた。
「今日の午後って、特別な予定とかある?」翔子が聞いてきた。
「私は、特にないかな……。家でのんびり過ごすくらい」
 由佳も早智もそんな感じだった。
「ねえ、午後みんなで出かけない?」
 亜依が声を弾ませながら提案する。
「いいね! 行こう行こう!」
 翔子もすぐに乗り気になり、誘いに応じることにした。

 約束通りの午後、公園に向かった。
 私は、アイボリーのパーカーワンピースに、お気に入りのマフラーをして集合場所に着いた。
 クリスマスが明日に迫っているだけあって、街は飾り付けが素敵でそれだけでも楽しくなりそう。
 集合場所の公園に行くと、亜依と翔子が既に待っていた。
「藍ちゃんの服、かわいい!」
 真っ先に亜依が褒めてもらい、嬉しくてしょうがなかった。
「お気に入りの服なの」
 後から来た早智にも褒めてもらえたが、やっぱり亜依に言われた方が一番嬉しかった。
 遅れて由佳が来たが、その服に視線が集まる。
「お姉ちゃんから、もらった服なの」
 それを聞くと、「かわいいー」や「いいな」と、みんなこぞって発した。
「つまり、それってお姉さんが着ていた服なの?」
「そうだよ。サイズが合わなくなるまで着ていたのね」
「いいなー、そのスカート。欲しいなー」
「絶対に、あげないから!」
 嬉しそうな由佳に視線が集まり、亜依まで興味を示していた。
 でも、由佳の言う『お姉さん』って——。
 すると亜依が私に近寄って小声で話してきた。
「あれ、美佳先輩の服だよね。絶対自慢だよ……」
 亜依の目には羨望が込められているように見えた。

 街中のショッピングモールで回りながら遊ぶことにした。
 ウインドウショッピングをしながら、本屋に寄った。
 みんな参考書などを見ているところを見ると、隙を見てそっと由佳に耳打ちした。
「由佳の今日の服って、本当に美佳先輩のお下がりなの?」
 すると由佳は小さく首を横に振った。
「今日のは……千佳姉のお下がり。美佳姉にあげたみたいだけど、一度も着なかったのね」
 その言葉に安心した私は、微笑みながら亜依には伝えず胸にしまった。
「やっぱり、そうなんだね」
 でも……亜依は気付かないのかな。

 参考書を見るふりをしながら、目が合ったときに亜依が笑ってくれるのが嬉しかった。
 寒空の下、帰り道では自然と亜依と二人になった。
 早智と翔子、由佳が少し先を歩いているのを見計らい、私はそっと亜依の手に触れた。
 冷たい空気の中でも、亜依の手は少し温かかった。
 亜依は驚いた顔をしたけれど、すぐに笑顔を浮かべてくれた。
「クリスマス、一緒に過ごせて嬉しいな」
 私が小さな声でそう言うと、「わたしも」と呟くように返してくれた。
 その瞬間、寒ささえも心地よく感じた。
 今年もあと少し。この時間を、大切にしていきたい——そう思ったな。

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